【馬の世界史】本村凌二(著) 中公文庫
もし馬がいなかったら、二十一世紀はまだ古代だった。
(プロローグより)
世界史の教科書は人類の祖先から話が始まります。
一方、この馬の世界史は馬の祖先の話、そして馬が人間に飼われる話から始まります。
馬と人間の関係、馬が人間に与えた影響、世界史に与えた影響、そしてそもそも馬とは何か。
馬は、人間社会のなかで、多種多様な役割を担わされてきた。
太古には狩猟の対象になり、やがて車を引き、人を乗せ、人間の世界に深く入り込んだ。
人が馬を乗りこなさなかったら、歴史はもと緩やかに流れていただろう。
戦争、交易、世界帝国……
馬から歴史を捉え直す。
(裏表紙より)
「馬の世界史」は馬を主人公にした世界史です。
・馬の進化と人間による家畜化
・馬の伝播と戦車の誕生
・西方ユーラシア(アッシリア・エジプト・ペルシア帝国)と馬の関係
・東方ユーラシア(中国周辺の遊牧民族・(始皇帝の)秦)と馬の関係
・古代地中海(ギリシア・アレクサンドロス・ローマ・ハンニバルとポエニ戦争)と馬の関係
・中央ユーラシア(フン族・騎馬遊牧民)と馬の関係
・イスラム世界とアラブ馬
・ヨーロッパ中世世界(ビザンツ帝国・騎士・十字軍)と馬の関係と、農耕馬の誕生
・モンゴル帝国とモンゴルがもたらした「世界史」
・火器の台頭と騎兵の没落
・南北アメリカの馬
・馬車の時代
・スポーツ(馬術・競馬)とサラブレットの誕生
・<補論>馬なき古代文明―アメリカ
どの時代においても、馬は人間の世界に深く入り込んでいます。
人間は馬と一緒に歴史を歩んできた、と言っても過言ではありません。
そしてこの本を読んだ後、本物の馬を競馬場で見たり、牧場で触れ合ったりした時、より感慨深いものになるかもしれません。
【本書からの引用メモ】
・馬の骨格がハミを噛ませるのに最適な構造上の特徴(p19)
・アメリカ大陸の馬と逆輸入(p21/p254)
・家畜馬と野生馬では染色体の数が違う(p31)
・馬の出現とインド・ヨーロッパ語系の武装集団が侵攻した時期と重なる(p42)
・馬の戦車の出現は、世界史の速度も速めることになった(p53)
・戦車は西アジアから東アジアに伝播(p54)
・動物は成熟する以前に去勢すると、骨は長くなり背が高くなる傾向がある(p69)
・アッシリアは北方の騎馬遊牧民と一足早く接触していた可能性(p72)
・エジプトでの馬種改良(p76)
・秦が軍馬を獲得するのに有利な条件にあった(p94)
・汗血馬は寄生虫(p107)
・ポセイドンは馬の神から海の神へ(p116)
・騎兵を活用した側が勝ったポエニ戦争(p124)
・十字軍とイスラム軍の戦いで発情する馬(p184)
・競馬の運営が国営か民間か、国によって違う理由(p284)・歴史を持たない存在から歴史をともなう存在になった5つの要因(p290)